HILLOCK未来日記⑤ テーマ学習 中編

HILLOCK未来日記⑤ テーマ学習 中編

2021年6月25日 オルタナティブ教育 東京

イントロダクション

前回のテーマ学習の未来日記ではコウラーナー(HILLOCKにおける児童。共に学ぶものという意味合いになります。)にどうテーマを動機付けるかということを主体に探究の始まりを描きました。

前回の記事はこちら

今回はシェルパ(HILLOCKにおける先生。学びのプロガイドという意味合いになります。)がデザインしたきっかけをどう自分自身の学びに変えていくかを未来日記にしていきます。
前後編のつもりで描いてきましたが、思ったよりもボリュームが増えてしまったので前中後編としてお送りします。それてば、中編のスタートです。

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未来日記

前回、3年生のテーマ学習の授業はいいところで終わってしまった。シェルパが授業の最後に出してきた問題はこれだ。

「実はこの新幹線に2つ、バイオミメティクス が隠されているよ。」
シェルパは教室のモニターにこの写真を映した。

画像1

『こういった自然の形や生き物の体の特徴をつかった技術をバイオミメティクス って言うんだよ。今回のテーマ学習は「自然の法則を応用して技術は発展していく」というテーマだ。』(前回のシェルパの問いかけより)

K君は言った。「昨日お父さんと探究してきたんだよ。そしたらね、この新幹線の先っぽは鳥のくちばしなんだって!」
「へー!!」
「なんていう鳥?」
と沸き立つコウラーナーたち。
Kくんも「カワセミっていうんだって!」と得意げだ。
そんな中で1人の女の子、Iさんがふと漏らした。
「でもどうして新幹線をデザインした人は鳥のくちばしを参考にしたんだろう…」

この疑問をシェルパは見逃さなかった。探究が深まる瞬間だ。
「そうだね!なんでオウムじゃなくて、スズメじゃなくてカワセミのくちばしなんだろう。かっこよさだったらライオンの顔が新幹線の頭でもいいかもしれないし笑」

Kくんもじっくり考えている。自分の調べてきたことをより深く考え理解するチャンスだ。
そんな時、Yくんがアイディアを出した。
「こういう時はいろんな視点で考えてみようよ!うーんこういう時は…」
Yくんは教室の壁に貼ってある眼鏡の形をした掲示物をとって持ってきた。
「みんな、こういう時はForm(形、見た目)とFunction(機能、役割)、Causation(原因、理由)で考えてみない?」
これはインターナショナルバカロレアのキーコンセプトに着想を得たアイディアグラスだ。いろんな視点で考えるとき、この眼鏡をつかう。

インターナショナルバカロレアPYP認定校 開智望小学校HPより引用

シェルパはコウラーナーたちの動きを見て、助け舟を出した。google slidesを立ち上げ、まとめるフォーマットを展開した。コウラーナーたちはそのシートに考えたことを書き込んでいく。

画像3

「カワセミのクチバシも新幹線の先っぽもとんがっている」
「新幹線の先は2段になってとがっている」
「新幹線は速く移動する機能がある」
「新幹線は人を遠くに運ぶ役割がある」
「新幹線より遅い電車は四角い形が多い」
「なんでカワセミなんだろう?」
「速く移動するのにとんがっている必要がある?」
「とんがっている方が人が乗る面積が狭くなってしまうのにとがらす理由があるはず」

疑問も発見も思いつきもごちゃ混ぜにして仮説や答えを探っていく。調べて答えを知るのはその後だ。

コウラーナーたちの仮説は
「とんがっている形に秘密があるはず」
「とんがっていることと速さには関係がありそう」ということだった。

答えを調べてみると大的中。高速で動く新幹線は空気抵抗が大きく、うまく後ろに空気を流すための形状だそうなのだ。

コウラーナー達は自分たちの仮説が答えと近く、大盛り上がりだ。1年生の頃からテーマ学習をしてきて、ここ最近は根拠に基づいた仮説を作るのがうまくなった。シェルパもコウラーナー達の成長を嬉しく思っているし、みんなと一緒に盛り上がっている。

しかし、ここで探究は終わらない。一息ついてシェルパは
『みんな、思い出して。「この新幹線には2つのバイオミメティクスが使われている」って言ったよね。もう一つはなんだと思う?』

「そうだった!」
「なんだろう…」

ここでシェルパは探究を進めるためにあえて答えを言った。シェルパは学びのプロガイドだ。学びに必要なことは道具として手助けをする。
「それはね、実はこのパンタグラフなんだ。これはフクロウの羽を元にしているんだよ。タカでも、スズメでも、カラスでも、ハトでもなくね。どうしてだと思う?」

画像3

コウラーナーたちはまた散々話し合った後、さっきまで話していた事と紐づけて結論を出した。
「やっぱり速く動く仕組みなんだよなぇ」
「さっきの空気抵抗?に関係しているのかなぁ」

その様子を見ていたシェルパはヒントを出す。
「フクロウは夜の鳥のイメージがあるよね。夜活動する生き物を夜行性の生き物というんだ。夜だから大きな羽の音を出してしまっては餌になる他の動物も起きてしまう。フクロウの羽は風が当たっても音が出にくいようになってるんだ。」
新しい情報が与えられたコウラーナー達はまた議論に戻っていった。

数十分の議論の末、前の問いと同じようにコウラーナー達は「パンタグラフが細くなっていたり、羽のように曲がっているのは鳥のように静かに速く動くため」という仮説を出した。この本来の答えは「フクロウの羽を真似したのは速く動く新幹線のパンタグラフが大きな音を出さないため」というもの。ある情報から仮説を作ることは、もはやコウラーナーたちにとっては日常の姿だ。もちろん仮説が外れることもある。必要な情報に辿りつかない時もある。そしたらまた実験をしたり、調べたりして検証する。そんな姿勢がコウラーナーたちにつき始めている。

シェルパが知識のきっかけをつくる展開はここで終わり。次からはいよいよ自分たちで選び、表現する学びへ。

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物事を深く探究するには体験と同様、しっかりとした知識も大切です。さまざまな科学的な知識を身につけたコウラーナー達、これからどんな風に自分の学びを選び、表現していくのか。いよいよ次回は後編。お楽しみに。